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Architects

及川 洋樹

オイカ創造所有限会社

〒106-0047東京都港区南麻布3-10-27-706
03-6455-7541
http://www.oica.jp/

多摩美術大学 大学院 修士課程修了
1999年にアトリエオイカを創設し独立。
2002年にオイカ創造所を設立しファウンダーとなる。
建物に思想を与え、命を吹き込むことがデザイナーの使命と考え、
デザインの提案はライフスタイルの提案をも含むべき、と主張する。
人のより良い生活環境を追求していると、必要なものや仕組みが観えてくる。
金銭では得ることの出来ない、仲間、時間、空間という間合いが、
人が生きる上で最重要なファクターなのであろう事に行き着いた。
なぜそれが必要かは文字でも表現されているように「人間」だからである…
我々の理想の環境は資本ではなく、人やものごとの関係性が鍵を握っていると考える。
コミュニティーアーキテクトとしてのコラムを業界誌で7年間連載。
日本全国各地で空き家再生のまち興しのファシリテート業務も
手掛けている。

Works

の作品

Interview

インタビュー

Q:家づくりで大切にしていることを教えてください。

私がいつも考えているのは、精度の高い家というか健康に留意したお家です。
断熱や耐震性能等にも当然こだわりますけれども、それプラス、できる限り家族でコミュニケーションの取りやすいデザインの家をいつも考えています。
建築というのは昭和の時代からずっと、「家族の健康と安全」を当たり前のように考えてきました。
でもここ数年は、「家族のコミュニケーション不足」について非常に注目しています。

最近では、一つ屋根の下でびっくりするような事件が起きるなど、病んでいる人が増えているのかもしれない、と感じるようになりました。
その原因は何だろうと考えた時に、複雑化された社会の中で、最低限、家族間のコミュニケーションがきちんと取れていたのだろうか、ということです。
なおかつヒートショックで亡くなる方が年間1万8000人とか1万9000人と言われていますが、それ以上に毎年2万人以上と、自殺者が多いのが今の日本の現状でもあります。
建築家として、生活する環境を整えるプロとして、家族同士どうやって顔を合わせられるか、会話ができるか、
会話を通わせなくても家族の気配に気づく、表情に気づく、そういう仕組みづくりは、設計の段階から考えていかなければと思っています。
そういう意味で、個室を与えた贅沢な家づくりは、果たして家族のために良いのだろうか?という問題意識のもと、
私の場合、ゆるくお部屋をつないでいくような仕組みづくりを常に考えているのです。


家主の考えを反映した環境に配慮した家

Q:家づくりを地域や街並みからも考えていくそうですね。

家族間のコミュニケーションを重要視している一方で、住まいを外部社会とのコミュニケーションの側面からも考えています。
ご近所とどのようにお付き合いができるかも敷地を調査していく中で提案させていただいています。
大切なのは、周りの建物との調和とか、町並みのリズムを壊さないということですね。
誰が見ても「この家は雰囲気いいね」と言ってもらえるような優しいデザインを心がけています。
品のある主張といいますか、そういう空気感を地域に与えるようなデザインを目指しています。

あとは、環境に配慮した自然エネルギーを活用した家ですね。屋根の上に太陽光パネルがあったり、蓄電池が置いてあると、
この家の家主は自然エネルギーを活用するような思考なのだな、というのが見る人が見れば分かるじゃないですか。
そういった家主の考え方が見える住宅づくりが理想です。
パッシブデザインもそうですが、家主の考えを反映した家であれば、影響を受けた近所の方が「私もやりたい」と思って、地域ぐるみでエネルギーを考えていくきっかけにもなります。
そういう点も家づくりのポイントだと思っています。
また断熱に関しても、例えば、窓が引っ込んでいるような外壁だと「断熱材が入ってるんだな」とか「外断熱だなとか」とか、プロが見ればわかるわけです。
断熱材の厚みで住まいの考え方がわかることもあるので、機能性も含めてデザインすべてに外部とのコミュニケーションとのきっかけづくりがしたい、
という思いをもって家づくりをしています。


30年後に資産として孫たちに受け継がれる仕組みを

Q:温暖化の問題も含めて、孫の代まで住める家を目指しているそうですね。

「健康、安全、家族間のコミュニケーション、外部とのコミュニケーション」その四つの項目をバランスよく考えながら、
最終的に家族に何かあった時に売れる資産、貸せる資産になっているか、という点も家づくりには大事だと思っています。
家族を守るのが家だとするならば、不動産という資産になるということを最低条件として、
それが今だけじゃなくて10年後20年後30年後に資産として子どもたちから孫たちに受け継がれる、というような仕組みを施主には伝えています。
それから、深刻化している地球温暖化に対して、脱炭素の視点ですよね。

2050年ぐらいの未来を考えながら子どもたちが生活する世界はどういったものか、という話をしたり、地球全体で毎年300億トンのCO2が排出されているライフスタイルの中で、
あと30年もするとまた平均気温が上がってしまう。ここで我慢して自然環境を守っていけば地球の寿命が延びるかもしれない、ということにも触れながら、
住宅の打ち合わせに来られた家族全員、そして子どもたちに対しても、大人になった未来の世界についてちゃんと説明して、
今ここでこういう家に住んでおけば未来が明るくなっていくからね、という話を伝えるんです。
そうすると子どもたちの目が輝いて喜んでくれますし、施主も「この子がこの家を継いでくれるんだ」という安心感と、
将来、空き家にはならない、ということをそこで確信するわけですね。
このように家づくりに対する思い出を「子どもたちの子どもに伝えてね」とも施主には言います。
そうすると孫の代まで語り継いでもらえる、また空き家を残さないという一つのポイントになると思うんです。
そこら辺も家づくりのストーリーとして記憶に残すように努力しています。


青森の自然を生かした園庭と雁木づくりを採用した園内

Q:住宅だけでなく公共施設も手がけていらっしゃるそうですね。

青森県の青森市、青森山田学園の認定こども園のデザインを手がけました。コンセプトは自然共生です。
園庭には遊具をいっさい置かず、園の前にある森を歩いてもらうように、デッキを組んだり、遊具として森を使うという考え方をしました。
園庭は子どもたちがクリエイティブな遊びができるようにバナナのような形のデザインにしました。
木造でアールを描くのは施工がとても難しいんです。このアールを描く施工は日本では3つのプレカット業者しか対応できないのですが、
そこはドイツのメーカーさんの機械を使って理想通りに仕上げてもらいました。
あと先生方が管理しやすいように、園内は雁木づくりを採用しました。
地元の文化の継承という意味でも、雁木でアーケードのような造形を作ることは青森らしさの表現にもつながります。
園内は出来る限り木を採用して、フローリングも放射状に弧を描くように板を貼っています。
教室も、子どもたちに自分の教室がすぐにわかるように、壁から突き出したように室名板を表示して廊下から見てすみれ組の教室だとわかるように作りました。
室名板の絵も私が描いて板も青森のりんごの木を使わせてもらいました。

園内のデザインもちょっと大人びたインテリアにしています。
じつは子どもたちがピンクや赤や水色が好きかと言うとそうではなくて、勝手に大人が子どもらしさは原色だと思い込んで使っているだけなのです。
実際、子どもたちがこのこども園に入ると、落ち着いたデザインや配色を喜んでいました。
木と触れ合うほうが、原色を使った空間よりも気持ちが落ち着いて、お昼寝タイムに子どもたちがぐっすり眠れるような空間になっているな、と、
私が実際、見させてもらって実感しました。
親御さんたちも喜んでいるようで、青森の地元のテレビ局が毎月1回ぐらい取材に来るほど、話題になっているようです。