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Architects

内木 ゆりな

THISONE DESIGN OFFICE

〒733-0035 広島県広島市西区南観音1-2-19
082-291-1124
https://www.thisone.jp/

二級建築士
建築設計全般
広島県出身
広島工業大学環境デザイン学科卒
THIS ONE DESIGN OFFICE 東広島オフィス

Works

の作品

Interview

インタビュー

Q:家の性能のこだわりについて、お聞かせください。

建物紹介ページに掲載した自宅で実施していますが、高気密高断熱を活かせる試みとして屋根裏に換気システムやエアコンを設置し、
家全体に換気された空気と温度調節された空気を循環するような仕組みを取り入れています。
屋根裏の空気がファンによって居住スペースや床下に送られるので、部屋だけでなく家全体に調節された空気が循環していきます。
そのため家の内側の温度差があまりなくなり、結露などの発生も防ぐことができます。
この方法を取り入れると一年を通して室内の温度がほとんど変わらなかったので、仕組みがうまく機能していることと、高気密高断熱が活かされているなと思っています。
また、冬暖かく夏涼しく過ごせる工夫の一つとしてコンクリートの蓄熱効果も心がけています。


断熱をしっかり行うことで、家中が一定温度で快適に

Q:断熱はどのようにされていますか?

屋根と壁は現場発泡ウレタンによる断熱を採用しています。床下は外部からのひんやりを遮るため基礎断熱にしています。
断熱材をしっかり入れると、冬場の天気が良い日は陽の光により25°Cぐらいまであがった室温が、日が暮れても持続されています。
曇っていても21°Cはあるので寒さによる不快感がありません。
夏場は26°Cぐらい。冷やされすぎず暑すぎず快適です。
冷たい空気は下にさがっていくので床下も冷やされ足元がひんやりした感覚があります。
調節された温度が保たれているのを実感します。


建物の向きを考慮することで日差しを有効利用

Q:パッシブデザインに関してはいかがですか?

パッシブデザインという観点から、なるべく真南に向くよう建物を配置するようにしています。
そうすることで、風の入り方や、太陽の向きが、どれぐらい家の中に影響してくるのだろうと設計してみました。
住んでみての実感ですが、やはり陽の光の暖かさというのが、すごく重要だということ。
マイナス5°C近くまで寒くなる冬場に実感します。
日中日差しが届くので、太陽光によって室内を温めておくことができます。
西日もできるだけ長い時間取り入れるようにするため、西側の外壁を斜めにしてウッドデッキ側の窓に届くような工夫もしています。
夜になると外は氷点下になることがありますが、家の中は20°C近くあるので子供たちは肌着姿で過ごすこともあります。
夏場は暑い日差しが直接家の中に入ってこないように南側の軒を深めに作っています。
これにより日射をほぼ遮蔽することができます。西側外壁の三角に抜けているところからは明るさを確保しつつ、日射遮蔽をしています。
この部分は冬には日射取得をする役割を果たしています。
また風もよく通るので、秋に近づいたころのカラッとした空気のときには屋根裏エアコンをオフにしていても涼しく快適に過ごすことができます。
「夏場は日差しが入って暑くなりませんか?」と質問されることがありますが、軒をしっかり作っていれば部屋の中に入る日差しを防ぐことができて暑さ対策にもなり、明るさも十分です。
敷地の問題もありますが、このようにパッシブデザインは建物の向きを意識するだけでもかなり住みやすくなると感じています。


屋根裏の空調と、家の中を壁で
仕切らないつくりでヒートショックなし

Q:ヒートショックにも考慮した家づくりをされているのですよね。

先ほどの空調の話につながるのですが、やはりヒートショックを起こす家の中の温度差を何とかしたいという思いがあります。
ヒートショックによる不快感をなくすために、屋根裏から風を送る方法にすると、ほとんど温度差がなくなることがわかりました。
トイレやお風呂場に行ったときに寒いという不快感が、屋根裏の空調と、家の中をあえて壁で区切らないつくりにすることによって、解決することができました。
家の真ん中に何もない物置きみたいな部屋があり、そこをコアにしてぐるっと回る感じで各スペースをつくっています。
生活動線も玄関の土間から入るとすぐに洗面とトイレ、そこからお風呂場があり、家族の洋服や着替えができるロッカールームがあります。
その流れでスムーズに支度ができるようにしています。
これは仕切りをつくらず家自体を回廊型にデザインしている利点です。
部屋の仕切りがないので、子供たちは周りをぐるぐる回って、いつも鬼ごっこしています。


家族の成長に合わせて家の中のスペースを
仕切るのも一つの方法

Q:家族の成長と共に、家はどのようにあるべきと考えますか?

現在、我が家は、子供が小さいので子供部屋にあたる部分がありません。
将来は、家具などを置いてスペースに区切りをつけることも可能です。
ただ、これは私自身の経験なのですが、たとえ立派な子供部屋をつくってもらっても、その部屋で過ごしたのは、高校生まで。
大学になったら家を出てしまったので、せっかく両親にベランダとクローゼットもある立派な部屋をつくってもらったのに、ちょっと無駄になってしまったんですよね。
無駄と言ったら失礼かもしれませんが、私自身はそこまで子供に部屋は必要かな、と思ってきました。

必要になったら、仕切れるような家具や、ベッドと机が一緒になっているものを上手に組み合わせて、
家族の成長に合わせたスペースをつくれるようにしたほうが、家族にとってずっと長く居心地の良い家になると思うのです。
また、この家はむかし田舎にある家族や近隣の人たちとのコミュニティである土間、お勝手、これらをモデルに発想を広げている設計です。
外部とのコミュニティを大切にするため、出入口となる台所土間から外廊を開放的にしています。
回廊型の室内からは視界に入らない場所に居ても人の気配や来客などを感じ取ることができ、そこからコミュニケーションが広がっていくと思います。
地域と共に成長していくということを意識しています。


見えない箇所に手間をかけることが、
家を長持ちさせる秘訣

Q:これから家づくりを考えている方にアドバイスはありますか?

今回、ご紹介した自宅はモデルハウスとしても、家づくりに興味のある方々に見学してもらっています。
実際に高気密・高断熱を施した家は、夏はどれだけ涼しくて、冬はどれだけ暖かいのか実感していただいていますが、
皆さん、「意外と壁で仕切らない構造もいいね」といった感想もいただきます。
私が住んでいる広島は場所によっては新築も多いのですが、空き家をリノベーションするケースも多い地域です。
お客さまには新築、古民家問わず「まずは気密・断熱をしっかりして見えない箇所にこそお金をかけましょう。
それが家を長持ちさせる大きな秘訣です」というお話をさせていただいています。