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Architects

坪井当貴

坪井当貴建築設計事務所

〒154-0021東京都世田谷区豪徳寺1-43-1 森ビル4階
03-6804-4240
https://tsuboi-archi.com/

建築家 / 坪井当貴建築設計事務所・一級建築士事務所 主宰
略歴
1972年生まれ神奈川県横浜市出身。建築専門学校を卒業後、建築設計事務所に勤務。
戸建住宅・店舗・オフィス・寺社建築等の建築企画・設計・監理の実務を行う。
2005年 北欧・ヨーロッパ8か国へ建築視察。
2006年に坪井当貴建築設計事務所を設立。
所属団体
SADI北欧建築・デザイン協会
一般社団法人 東京建築士会 会員
一般社団法人 全日本建築士会 会員
日本耐震防災事業団 木造耐震プランナー
主な受賞歴
卒業設計・青山同潤会アパート再生計画において日本建築協会会長賞(1995年)
第22回日新工業建築設計競技「空のある住まい」3等(1996年)

Works

の作品

Interview

インタビュー

Q:住宅設計で大切にしているポイントについて教えてください。

今年で事務所を立ち上げてから17年目を迎えます。
これまで戸建をメインに住宅設計に携わり、耐久性や性能強化にも取り組んできました。
私は事務所を開設する前、ヨーロッパを旅した経験があって、海外の住宅―特に北欧の住宅の在り方について触れてきました。
住まいづくりは、当然ですが国によって異なります。
日本には日本のいいところが、海外には海外のいいところがそれぞれあります。
しかし「住宅」というものを客観的に捉えたとき、日本では「いま自分世代が住むことだけ」を考え、
そこで完結させてしまうのが一般的なのに対し、北欧では「孫の世代になっても住み続けられるか」が、議題の中心になります。
建築に関わる中で、私は住宅を一過性のものではなく、日本でも北欧のように、後世へと受け継ぐ〝財産〞として捉えられないかずっと考えてきました。

例えば、共働きの夫婦が土地を買って家を建てる場合、当然二人暮らしですから、そんなに大きな家は必要ありません。
ただ「家を建ててしまったらそこでおしまい」ということではなく、せっかく建てた家が、10年、15年と時間が経ったとき、どんな姿であってほしいのか。
その姿がデザインや設計をする上で、とても大切なポイントだと考えるようになりました。
「時間軸で物事を考え、30年先に家がどんな姿をしているのか」ということを目標値のひとつと定めて、その目標から逆算して設計するのが、私が大切にしている建築の在り方です。


建てる家の未来の姿を想像して設計を行う

Q:住宅を設計する際、どのような点に気をつけていますか?

例えば、共働きのご夫婦で住む家を設計するとしたら、はじめて住宅が完成する時には、まだ共働きのライフスタイルは継続されていることと思います。
なので、一般的には夫婦二人が使いやすい家事動線の間取りや部屋割りで、なるべく効率よく、合理性の高いプランニングをすべきと考えるわけです。
部屋の使い方もあまり限定せず、どちらかと言うと寝室とかリビングとか、お客さんやご両親が来ても応用が利くような場所を用意することを、まずは思い浮かべるでしょう。
しかし、そういった部屋のつくりはずっと同じ姿ではありません。将来子供ができて、その子が成長するタイミングがやって来たとき、
家族が増えることを想定した家づくりをしていないので、足りなくなるのです。

そこで、部屋を増やし増築し、と行き当たりばったりな増築を繰り返すことが、特に昔の建築では多くありました。
その場しのぎでつくる室内なので、違法建築になってしまったり、性能も不安定なものになってしまったり、
結果的に次の世代が使いにくいつくりの家になってしまうというのが、日本では非常に多く見受けられるのが現実です。
せっかく家づくりをするのであれば、これから過ぎる時間軸で、暮らしにどのような変化が起こり得るのかをシミュレーシ
ョンし、たとえ規模感が小さくても未来を見据えた設計にするよう提案しています。


二世帯住宅は家族が一緒に住むだけでは完成しない

Q:二世帯住宅の設計も得意にされていると伺いました。

いま、二世帯や三世帯などの多世帯の案件を数多く手掛けています。
「住宅=家族資産」という視点で見たときに、実はこの家族資産の最たるものが「二世帯住宅」なのではないかと考えています。
二世帯住宅というのは、当然ですが家族が二世代に渡り同じ住宅に住むことを目指します。
そうすると、たとえ親子であったとしても考え方や暮らし方が世代間でまったく異なることに気がつくのです。
またその関係性も、お嫁さんの家族と住むケースもあれば、旦那さんの家族と住むケースもあります。
どのような関係での二世帯なのかは家族ごとで違うため、そこに雛形はありません。
世代間のこと、家族の関係性については条件が難しいですが、クリアしないといけない問題でもあります。

単純に親子関係の問題だけなく、「これからの関係性をどうつくっていくのか」という課題に対して、建築家がすべきことを、「建築」によって答えを出さないといけないのです。
一緒に住むことをすごく楽しみにしていたのに、「実際に暮らしてみたら生活環境がそぐわなかった」となれば、そもそもの意味が失われることになります。
二世帯住宅で住むからには、「一緒に住んでよかったね」とならなければ、その家をつくる根本自体が崩れてしまいます。
ですから、事前のヒアリングや雰囲気から家族の関係性を読み取ることも、建築家に求められる重要なスキルのひとつです。
二世帯は、5年が経過した後に暮らし方や環境がどう変化するのか。時間が経過した後にこそ、
しっかり絆をつなぎとめるためにどのような住宅をつくるべきか、それが核になってくると考えています。


安全であること、普遍的なデザインであること

Q:耐震性についても考えて家づくりを提案されるそうですね?

正直なところ、耐震等級に基づいた耐震性能だけでは不安だと思っています。
建物が壊れないことだけでなく、揺れないということも大切です。
どんなに耐震性が高い建物でも、揺れは起こります。揺れによって、家具が倒れたときにはその下敷きになることがあるかもしれませんし、繰り返される余震も安全性に影響します。
最初の揺れでは問題がなくても、二度三度と揺れたときに倒壊したという事例も少なくありません。
そうすると、耐震性を高めるだけでなく制振ダンパーという建物の揺れ自体を軽減する装置などの導入を検討する必要もあります。
こういった装置を使えば繰り返しの地震による耐震性能の低下も抑えられるので、建築物の性能を長く維持していくことができます。
最新のテクノロジーも駆使しつつ、住宅の在り方を考えていくべきだと提案しています。

一方でデザインは、流行を追い将来古びてしまうようなものでなく、普遍的な中にも落ちつきや安らぎを感じる素材感だったり、
長きに渡って受け入れてもらえるような考え方が大切だと思います。
単純にかっこいい住宅を設計すればいいのではなくて、住む人が30年、40年と暮らしていくにあたって、どういう住宅を提示するべきなのか。
それを考えることが一番伝えたいことでもあります。
それが、私らしいリアルな提案であり、住む人にとっては新しい形の提案になればいいなと思っています。