tel

Architects

田代敦久

田代計画設計工房

〒211-0005 神奈川県川崎市中原区新丸子町749 ハウス749−2F
044-733-3105
https://archi-atelier.com/

明治大学工学部建築学科卒業後2つの設計事務所を経て30歳で独立。
以来約250件の実績
内訳は住宅系が70%(専用住宅・共同住宅など)
商業系が20%(レストラン・カフェなど)
他10%(事務所・医院など)
設計でいつも考えているのは
「クライアントの個性(要望)を生かしつつ環境に配慮した美しい建築を創造する」事
趣味は美味しいものを食べる事(その為の旅行)
体を動かす事(カーレース・スキー・ゴルフ・水泳ほか)

Works

の作品

Interview

インタビュー

Q:施主さんからのオーダーをどのようにデザインに落とし込んでいますか?

最初に施主さんからヒアリングをしますが、ご要望の多くは「20畳のリビングがほしい」「住宅雑誌に載っていた素敵なデザインの家のようにつくってほしい」など、
根拠がないことが多いように思っています。
そうではなく、「これから先、10年、20年と家に住み続けていく中で、本当に20畳のリビングが必要なのか」「どんな暮らし方が理想なのか」を施主さんにしっかり聞き取りして、
「それなら20畳のリビングをつくるより、一部をつぶして趣味の部屋をつくったほうがいい」など、先を見据えたご提案をするようにしています。
あと、私がデザインをするにあたって重要視しているのが、ダイニングです。
じつは家族がそろって食事をする時間というのは意外と少なくて、お子さんと会話ができるようになるのが幼稚園の年長さんくらいだとすると、
家族が夕飯を共にして会話を楽しむ期間は、せいぜい10年くらい。
それ以降はお子さんが思春期になってしまい、なかなか親と顔をつき合わせて食事をすることを嫌がる時期になります。
だからこそ、家族が集って食事をするダイニングを少しでも居心地のよい空間にすれば、お子さんが大きくなったとしても自然と家族が集まるスペースになるのだと思っています。


風通しは良いけれど、虫が発生しないように改装

Q:建築ページで紹介した「あざみ野の家」はどのようなこだわりがありますか?

前ページで建築例としてご紹介した、あざみ野の家は家族構成が、お父さんとお嬢さん、結婚しているお嬢さんとそのご主人とお子さんの二世帯住宅です。
建て替える前の家がとても寒かったということで、暖かい家がほしいということと、以前は道路際に大きな塀があってその内側が庭だったのですが、
蚊がすごく出るので夏は網戸が開けづらく、生活がしにくかった、ということを伺いました。
新しい家は、暖かくて風通しもよく、窓が蚊の心配をしなくても開けられる家、というのが主なオーダーでした。
立て直した家は、駐車場の上が木製デッキになっていて、お子さんがまだ小さいため安全に遊べるようになりました。
また以前は庭が芝生だったので、いろいろな虫が発生して大変だったのですが、造園家の方と相談して虫が発生しづらい植栽を選んで植えています。

また、もうひとつのオーダーがリビングにある作り付けの家具です。
じつはこの部分にテレビの脇の上下に繋がっている収納部分があり、そこは仏壇が入っています。
ご主人の奥様が亡くなったのをきっかけで家を建て替えることになったのですが、仏間に仏壇を置くのではなく、
家族が集うリビングに仏壇を置いてあげたらどうですか?と私が提案しました。
普段は扉を開けっぱなしにして仏壇が見えるようにしていますが、お客様が来たときは扉を閉められるようにしています。


ひさしをつくって日射取得、日射遮蔽に配慮

Q:高断熱・高気密に関しては、どのような工夫をされていますか?

あざみ野の家に関しては、以前の家が寒かったということで、気密性をしっかり施しました。
サッシも気密性が非常に高いへーベシーベを使用し、窓はフィックスではなく左右に入っていて、戸袋も網戸も付いています。
へーベシーベというのはスライドするのですが、レバーで気密がしっかり取れる窓です。
通常、引違い戸というのは、どうしても隙間が出てしまい、気密が取れないのですが、今回使用したのはそれに配慮している窓です。
大開口部のメインの窓は木製サッシですが、ひさしをつくって日射取得、日射遮蔽に配慮しています。
断熱材は、ロックウールを使用しています。
壁内結露にかなり配慮していて、外側に貼る透過性のあるボードを使っています。
普通は木材の合板を使うのですが、あまり湿気を通さず、壁の中に湿度がたまって結露するリスクがあるのです。
あざみ野の家では、付加断熱まではしていませんが、6年前の建物でUa値0.6前後なので、当時としてはかなり高性能だと思います。
また、湿度を外に逃がすような壁材を使いながらも、かなりの高気密になっています。


壁内結露を起こさない壁の構成

Q:暖房計画はどうされていますか?

床暖房を入れることもありますが、少しおもしろい工夫をしています。
というのも、普通、床暖房は床下に温水を通して床を温めますが、私が使用するのは床下の空洞にダクトを通して、そのダクトに暖かい空気を流す方法です。
さらにその下の土間のコンクリートを温めて、その輻射で床全体を温めています。
お湯を流す床暖房は、いつかは経年劣化で壊れます。そうなると事実上、修理できないので、その時点からその家に床暖房がなくなるわけです。

でも空気を通す分には壊れないので、かなり長く使える上、熱源が割と簡単に交換できるという利点があります。
例えば、しばらく電気が安いと思ったら、電気を熱源にできますし、ガスを熱源にしたり、灯油を熱源にしたり、ヒーターの部分の熱源を変えられるメリットもあります。
これはいわゆる床下エアコンではなく、北欧で多く使われているシステムです。
床断熱で地下断熱を温めるやり方で、基礎部分も外断熱して密閉して断熱しています。
これは床下空間をちゃんと断熱することによって、室内を室内以上に温め、床全体を輻射熱で温めてあげるというものです。
この方法だと床に無垢材を使うことができるメリットもあります。普通、床断熱だと無垢材は使えないのですが、床自体がそれほど高温にならないので無垢材が使えるのです。
ちなみに、2階の暖房は基本的には1階の暖気が階段を通って、上に上がっていくシステムになっています。


熱環境と機能性、家づくりにはバランスが大切

Q:そのほかにこだわっている部分、大切にされている部分はありますか?

そうですね、逆に言うと大切にしていないところはないというか、バランスが大事だと思っています。
例えば、熱環境はこれからますます大事になってくるでしょうし、だからと言って機能性が悪い、使いづらいというのはダメだと思います。
構造的に弱い家ももちろんダメで、ひとつでも欠けたらよくないと思っています。
低予算なら低予算なりにバランスを考える、予算があれば、それにあったバランスを考える、ということで、バランス感覚が一番大切なんでしょうね。
あまりひとつのことに突出して他はどうでもいい、ということはしたくありません。
建築家としては、もちろん美しいデザインの家をつくりたいという願望があります。
先ほどバランスが大事というお話をしましたが、機能性に関しては技術は日進月歩で進化しているので、「今ならもっとこうする」という目指すべきものがつねにあります。
例えば、ZEHクラスは必ずしも太陽光は乗せられないので、全体のバランスとしてなるべく目指していましたけれど、今なら外貼りをするだろう、というのはありますね。
予算との兼ね合いもあるので悩ましいところですが、ランニングコストを考えたら躯体性能を上げることが何より優先事項だと思います。
これからも施主さんにとって住みやすい家を目指して、建築家として新たな挑戦を続けていきたいと思っています。