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Architects

大澤和生

一級建築士事務所マルスプランニング合同会社

〒160-0016 東京都新宿区信濃町11-16
03-5363-5165
https://mars-arch.com/

1967年5月 東京都生まれ
1986年3月 桑沢デザイン研究所 卒業
1986年4月 株式会社元木環境企画 入社
1988年4月 マルスプランニング塚原濱田設計事務所 入社
1997年2月 マルスプランニング大澤設計事務所 設立
2008年7月 一級建築士事務所マルスプランニング合同会社として法人化

受賞歴
2004年10月 杉並区商店コンクール区長賞
2005年5月 新住協第5回住宅コンクール最優秀賞
2011年1月 杉並区商店コンクール区長賞

Works

の作品

Interview

インタビュー

Q:建築デザインでモットーをしていることをお聞かせください。

住宅設計は施主さまの想いを聞くことから始まります。
機能・デザイン・可変性という要素は条件によって変わっていきますが、施主さまの想いが家づくりの方向性を決めるからです。
対話を重ねるとそれは鮮明になり、時には気づかずにいた家のイメージが浮き彫りになります。
個々の家族にオンリーワンの住まいを提供するのが建築家の使命だと思っています。
家の性能的には、相当前から高断熱・高気密をやっているという自負があります。

特に寒冷地の別荘や高級住宅街の建物のオファーが多いです。
高気密・高断熱を取り入れた家の設計をはじめたきっかけは、「新木造住宅協議会」という高気密・高断熱の団体の関東支部の支部長さんで、
工務店を経営している方からのすすめでした。そこから家づくりに高気密・高断熱は欠かせないと気づき、今に至っています。


グラスウールはコストパフォーマンスが高い断熱材

Q:具体的に高気密・高断熱にするための工夫はどのようにしていますか?

うちは施主さまから特に指定がなければ、断熱材はグラスウールを使っています。
一時期、メディアでグラスウールがすごく悪者扱いされたことがありましたが、基本的に気密をきちんと確保さえすれば、断熱材としては一番コストパフォーマンスが良いのです。
グラスウール自体はガラスを原料とした繊維ですが、気流が入らなければしっかり機能します。
グラスウールをうまく機能させられなかった昔のやり方だと、気流が止まらなかったり、室内の湿気を含んだ空気がグラスウールの中に侵入してしまうことがありました。
それが外気で冷やされて壁内結露を起こすことによって、断熱性能が低下したり、耐久性を損なっていたというのが基本的なメカニズムでした。
そこを改善すればいいというのがグラスウールの充填断熱の基本理論なんです。


冬の日射取得を重視した設計

Q:それ以外で室内を快適にするための工夫はされていますか?

床暖房を入れています。寒冷地では暖炉や薪ストーブを入れることもあります。
ただ、施主さまに聞くと、皆さん、冬場でも暖房は必要ないくらい、室内は暖かいとおっしゃってくださっています。
また、南側には日射取得を重視した窓をつけて、冬には暖かい日差しが入るようにしています。
おかげで冬場でも室内温度は24~25度くらいあります。夏場でもクーラーをかければ快適です。


高気密・高断熱の性能の良い賃貸住宅の設計依頼が急増

Q:最近、どのようなオファーが増えていますか?

ここ数年は、高気密・高断熱の性能の良い賃貸住宅の設計のご依頼が増えています。
建築ページでも紹介した、茨城県のつくばにあるテラスハウスの賃貸物件は、南向きのテラスから太陽光が入ってくるように、
1階がリビングの建物と2階にリビングがある建物とに分けて建築しています。
また、バルコニーが隣接しないようにデザインすることで、各々のプライベートを確保しながら、全体的にリズムが出るようにデザインをしています。
断熱材に関してはロックウールを使用して、ポリエチレンフィルムを使って充填断熱しています。
建物自体は7年前に建てられたのですが、長く住んでくださる方が多く、気密・断熱をしっかりしてあることで、暖房費がかからないなどの声をいただき、
現在でも空きが出ないほどの人気物件となっています。

また、同じ賃貸住宅でも、都会では防音完備の建物の要望もあります。
私が担当したのは、目黒にある音楽家が住むための防音設備のあるマンションです。
グランドピアノはもちろん、地下の部屋ではドラムを叩いても音が響かないように防音設備を完備しました。
防音設備をよくすると、おのずと気密・断熱の性能が良くなります。
この建物で一番こだわったのが、地上と地下の排水を切り分けることで、排水溝から音が漏れるのを防いだことです。
吸排気のための部屋を直接外気に出してしまうと、そこでどんなに排気口を曲げたとしても音が漏れてしまいます。
それを防ぐために地下ピットの一部のデッドスペースを利用してチャンバー的に扱い、防音の内張をし、そこに排気をためて、そこから(排気を)外に出す工夫をしました。
また、これまで長く住んできた家を改修する場合も、できるだけ既存の家の座敷にある古い柱や扉など、その家の歴史を感じる古材は再生するようにしています。
その場合は、古民家再生に詳しい大工さんにお願いしてお屋敷の解体をしてもらっています。
なかには、欅の玉杢など1枚で50~60万円もする古材もあります。こういったなかなか手に入らない高価な古材の目利きも大事になります。
これまでのケースでは、金庫の扉や雨戸板を再生したこともありました。
このように古いお屋敷の改修は、家主の思い出を大切にしつつ、いかに古材を有効に使うか、建築家としては思案のしどころでもありますね。


プライバシーと景観を楽しむためのデザインを考慮

Q:プライバシーと高気密・高断熱の家を求める声が増えたそうですね。

つくばの賃貸建物のところでもお話しましたが、プライバシーに配慮した気密・断熱性のある家を求める施主さまは増えてきました。
どうしても私たち建築家の住宅は、窓が大きくて開口部が開いて、開放感があり、窓からの景色を考慮したデザインをつくりがちなのですが、
気密・断熱性を考えると、そういう開放感とのバランスを考えながら設計する必要があります。
加えて外からプライバシーを守ることも配慮すると、窓を大きくしながらも、開くところは少なく、というパターンが多くなりがちです。
日差しを計算したパッシブデザインというよりも、景観を考慮しながら気密・断熱を考慮するやり方です。

例えば、正面に富士山、右を向くと北岳が一度に見える土地では、山を楽しみ、空も一緒に見ていただいたほうがいいということで、
大きな窓を南に向かって開けるようなデザインにしました。
気密・断熱はマストなのですが、いかにその土地が持つ景観のすばらしさを楽しめる家にするのか、しかも家人のプライバシーに配慮するというのが、建築家の腕の見せ所です。
近年、平屋が人気となっています。
ひと昔前は平屋は別荘が普通でしたが、今では都心であっても平屋のオーダーが多くなってきました。
デザインでは和風でモダンな感じを好まれる施主さまも増えました。
和風テイストのデザインを取り入れる建築家が意外と少ないのかもしれないですね。
自分の建築家としての売りや得意分野を明確にしながら、これからも住んでいて心地の良い機能性の高い家づくりを目指していきたいと思います。