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Architects

伊藤朱子

有限会社 伊藤朱子アトリエ

〒146-0091東京都大田区鵜の木3−23−12−602
03-6425-6468
https://shukoito.com/

1971年 神奈川県生まれ
1994年 武蔵工業大学(現、東京都市大学)工学部建築学科卒業
1999年 有限会社伊藤朱子アトリエ設立
2000年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程単位取得退学
2005年 〜 2008年 明治大学理工学部兼任講師
2008年 〜 2011年 日本大学理工学部非常勤講師
2010年 東京都市大学都市生活学部非常勤講師
2011年 〜  東海大学大学院非常勤講師
2012年 〜  東海大学教養学部非常勤講師
東京都市大学都市生活学部非常勤講師
2016年 〜  立教大学コミュニティ福祉学部兼任講師
現在、有限会社伊藤朱アトリエ主宰、取締役

受賞歴
1994年 武蔵工業大学工学部建築学科卒業設計 蔵田賞
1998年 東京デザイナーズウィーク’98
デザインプレミオ プレミオ賞
横浜デザインパターン・コンペティション 特別賞
1999年 「武蔵野市Oビル」最終選考 (OZONE主催)
「遊牧民族な私の家具」入選(OZONE主催)
かわさき産業デザインコンペ’99 KSP賞受賞
2000年 第6回ユニオン造形デザイン賞 奨励賞受賞
2001年 王子駅前小さなホールのある建物 最終選考(OZONE主催)
生活者のデザイン展 入選
2003年 山梨県建築文化賞受賞(麓の家)
2004年 Sumida-Mono-City Project
国際建築家連合 / UIA都市礼賛コンペ入賞
2007年 第11回都市住宅プロポーザルコンペ
「(仮称)コートデコ成城」入選
(株式会社キーワード主催)

Works

の作品

Interview

インタビュー

Q:建築家として着目している設計のポイントはどこでしょうか?

建築材料による気密・断熱性能を考えることはもちろん、それとは別に、パッシブデザインの考え方を基に、日射取得と日射遮蔽をどう実現するかを意識しています。
冬には日射をどう室内に取り入れるか、逆に夏は日射をいかに遮るかということです。
特に夏場の陽射しの抑え方は熟思します。日射取得と日射遮蔽を考える上で、まずは家を建てる敷地の形状、
そしてそこに関わってくる諸条件も合わせ、窓の位置といった配置を決めていきます。

また、方角や向きも大切なポイントのひとつです。
例えば、南側が道路に面している敷地の場合、この南向きの面が、住まいの〝一番の顔〞となる部分なので、やはり光を多く取り込んで明るくしたいですよね。
一方で、夏にはどうやって日射を遮蔽するか。解決方法として、ブラインドを採用すれば簡単ですが、例えばファサードデザインを重視しつつ、ひさしを出すという方法もあるわけです。
このように提案していく中で、もし実際にひさしの出し方で、「本当に冬はリビングに陽差しが入り、夏は遮断されるのか」ということもすべてシミュレーションを行い、
外観デザインを決めるようにしています。

ほかに例えば窓ですが、通常はカーテンなどを開けっぱなしにしていると、外から室内が見えてしまうことがありますよね。
住む人からすれば、通りを歩いている人に室内が見えてしまうのは気まずいと思います。
だからと言って一日中カーテンを閉めっぱなしにはしたくない。
――というような設計条件であれば、吹き抜けを設けてあえて1階の南側には窓をつけないような提案をすることもあります。
窓は2階にだけつけて、冬はそこから1階にも陽が差し込み、夏は直射日光は遮断される......
というように、家を建てる方角やロケーションとデザインをどのように調和させるのか、そこが建築家としての腕に見せどころでしょうか。


デザイン性だけでなくトータルバランスを考える

Q:設計の他に、こだわっている点について教えてください。

当事務所では庭のデザインも私が考え、信頼できる造園業者に依頼して進めます。
基本姿勢として、いろいろな提案をさせていただく中から最終的な要望をうかがい、予算内でその希望に添うかたちを実現できるよう心がけます。
具体的にどのような提案をするのかと言いますと、例えば、自然を感じられる庭にしてほしいと要望があったとして、その通りに造園施工を行うと予算オーバーになってしまう場合。
モルタルにカラーリングをして本物の石のように見せるなど、新しい素材としてご提案させていただくこともあります。
このようにして、ひとつずつお施主様と一緒にデザインを選んでいくようなアプローチを行っています。


また当事務所は、一級建築士事務所として、住宅だけにとどまらず、空間デザイン、建築設計、店舗デザインなど、空間デザインの中でジャンルを問わず取り組んできました。
今後はコストを調整しながら、より性能が良い〝躯体を作る〞ことを強化していきたいと思っています。


RC造の外断熱施工を足掛かりに建築の未来を考える

Q:これから取り組んでみたい建築・設計などはありますか?

現在、外断熱のRC(鉄筋コンクリート)造の賃貸の集合住宅の設計に着手しています。
日本では、外断熱を施したRC造建築は、建築費が上がり、割に合わないと思われているのですが、欧米のRC造は断熱性能やサッシの性能に関して、日本よりも厳しい基準があり、
高性能であることが義務付けられています。

RC造は外断熱にすると、コンクリートの躯体が室内側の温度の蓄熱体になるのでとても快適で省エネです。
さらにコンクリートが外気や日射にさらされないので、躯体が長寿命で外壁の維持コストも安く済みます。
いま世の中の流れが「省エネ性能が低いことは今後コスト負担が大きくなる」と認識されつつあるので、この先賃貸住宅の借り手の意識は変化するだろうと感じています。
不動産投資としてRCの賃貸住宅を検討している方は特に、外断熱の高気密・高断熱の建物にすることをおすすめしたいと思います。

結局のところ、家づくりに関わる計画・設計・施工から建物の維持管理、解体・廃棄までのライフサイクルコストを総合的に計算してみると、
初期費用が少々多くかかってしまったとしても、本当にいいものをつくるのなら、最終的にランニングコストも鑑みると最終的な費用は安くなるんです。
しかも、高気密・高断熱の住まいは、健康にもいい。これから建て替え予定の私の実家も、可能な限り高気密・高断熱住宅にしたいと考えています。
正直なところ、コストはかかります。

ただ、未来を見据えると、サスティナブルであることが配慮されていることも大切な視点になってきますし、
室内環境がよくなり、住み心地が段違いで変わってくるので、皆さんにもぜひその違いを体感してもらいたいと考えています。
私は、基本的には「なんでもやります!」がスタンスで、これまでは店舗デザインをはじめ、
高齢者福祉施設の設計やビル内のクリニック、テナントビル、保育園、集合住、木造住宅アパートなど幅広いジャンルの建造物を手掛けてきました。
これからは、規模感の大きな公共建築や、断熱改修も含んだリフォームにも取り組んでいきたいと考えています。家づくりに遠慮は不要。


要望を叶えることが建築家の仕事

Q:これから家をつくろうとしている方へのアドバイスをお願いします。

まず、性能とデザインは両立できる、ということを伝えたいです。もちろん建築家によっては得意としているデザインがあるかもしれません。
しかし、住む方にだって好みはあります。
だからこそ、要望を聞いた上で、「もっとこうした方がいい」「この組み合わせよりこっちの方がいいのでは?」と、お施主様と建築家が意見をすり合わせ、
いいところを探っていくことが大切です。

その調整力も、建築家に必要なスキルだと捉えています。
お施主様・設計事務所・施工会社がそれぞれの立場で、理想の家づくりに対して意見を出し合うからこそどんなデザインでもできると思っていますし、
建築家としてデザインするからと言って「絶対にこれでないといけない」というこだわりも、いい意味で持たないようにしています。

実際に手がけた建築物を見た方から「ナチュラルなデザインが得意なんですか?」と尋ねられることもありますが、
住まいなら住む方が心地よく過ごせること、店舗なら経営戦略などに合わせて変えていくようにしていますし、お施主様の考えや想いを最大限に引き出すことを一番に考え、
設計をしていくのが私のスタイルです。

同じ金額を払うとしても、その枠を外して選択肢を増やすことが可能になるのが設計事務所の魅力です。
理想と予算が合致するものを探すのは大変ですが、要望が多いほどやりがいがあって楽しみも増えます。
それが建築家という仕事の面白さなので、ぜひいろいろと要望を聞かせてくださいね。