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Architects

大川三枝子

株式会社 オオカワ建築設計室

東京都中央区日本橋本町4-2-11
03-6225-2645(ほぼとりません…。メールでのお問い合わせをお願いいたします。)
https://toriwakanotare.com
 
オオカワ建築設計室
代表/一級建築士/省エネ診断士
1973年2月28日 兵庫県生まれ
東海大学工学部(古建築研究室)卒業後、OMソーラー加盟工務店、まちづくり、設計事務所勤務を経て株式会社オオカワ建築設計室を設立。エネルギーまちづくり社/取締役、一般社団法人WHAIS/副理事など切り口の違う設計活動を並行し、暮らしや家づくりに関するワークショップ、イベントも開催している。単に建物をつくるのではなく、その人らしい暮らし方や家の育て方、町をつくる視点から取り組んでくれるちょっと変わった設計事務所。

Works

の作品

Interview

インタビュー

Q:住まいの改装における、機能面でのこだわりや工夫はありますか?

建物ページでご紹介した、築55年の農家さん平屋の改装工事では、設備と間取り変更と合わせて耐震と断熱性能をアップして暮らしやすさを上げることがお施主さんからのご要望でした。
日本家屋は小屋裏がものすごく広いのが特徴です。この住まいも冬寒くて、夏暑いのでその改善も大きなミッションではあったのですが、
家族が集まるリビングは小屋裏を見せて、天井を高くしました。
屋根を外断熱して、壁には断熱材のグラスウールをていねいに充填することで、エアコンが効いて冬場も寒くなく、夏の暑さが家の中に入らないようにしました。
これまでは外気温と家の中の室温が同じ状態だったので、冬場は家の中が寒くて仕方なかったとお聞きしましたが
断熱リノベをしたことで36坪もの広い家が大きめのエアコンひとつで快適に住めるようになったと、ご家族に大変喜ばれています。


屋根裏を見せながら、天井に断熱を施す工夫

Q:大川さんならではの断熱の工夫はありますか?

本来なら屋根の内側で充填断熱をします。
しかしながら私が担当してきた住宅の多くは、小屋裏を見せる設計になっているので、野地板の上側で屋根断熱をしています。
将来的にさらに断熱をしたい場合は、野地板の下側からで追加で断熱がしやすい、というのが利点になっています。
木が見えている事はデザインだけでなくメンテナンスしやすく、応用しやすいという良さがあります。


冬場は土間の薪ストーブで暖か、夏場は中2階のエアコンで涼しく快適

Q:母屋の隣の息子さんのお宅では、どのような工夫をされていますか?

もともと息子さん夫婦は、母屋の隣にあった倉庫を改装して自宅にすることを希望されていましたが、建築的な条件に合わず、新築として建てることになりました。
玄関を入ると横長の広い土間があり、そこに薪ストーブが置いてあり、ここで暖をとるようにしています。
土間からすぐダイニングキッチンがあり、1階には農作業用の車も入るように広めの駐車スペースがあります。2階は個室、中2階にフリースペースと水回りがある設計です。
断熱に関しては、屋根と外壁、基礎断熱材を入れています。
冬は土間にある薪ストーブだけで暖かい空気が家中に行きわたる仕組みになっています。
夏は中2階にあるフリースペースのエアコンをつければ冷たい空気が下に降りて家全体の空気を空調するようになっています。
夏の電気代は、狭かったアパート暮らしの時より1/2に減ったとのこと。


家の性能を高める気密は耐火と相性がいい!

Q:エコ住宅に関するお考えをお聞かせください。

これからのエコ住宅は、大きな家を建てるのではなく、コンパクトながら質のいい建物をコンセプトに提案をしたいと思っています。
そしてメンテナンスしながら家を長持ちさせていく。
このような建物を私は「型落ちしない躯体」と呼んでいます。
私が現在、事務所兼自宅として住んでいる建物は建築面積9坪くらい。
コンパクトながらも長く快適に住むためいろいろ工夫して設計しています。
この建物は「木造耐火建築物」の中でも「1時間耐火」に分類されています。
「1時間耐火」とは、もし火事になっても1時間は焼け落ちずに自立していなければならないという性能です。
隙間なく施工することが大切な点を考えると、気密と耐火は共に性能を上げることができる組み合わせなのです。
今でこそ建築業界は木造住宅を主流にしよう、という流れになっていますが、
この住宅を建てた9年前は「日本橋のこの地域に、なぜわざわざ木造住宅を建てるのか?」といろいろな工務店さんに聞かれたりもしましたが、
これからはもっと町の工務店さんと設計事務所が一緒になって木造住宅をつくっていくことで、地球全体に負担にならない家づくりを続けていきたいと思っています。


東京産の木材を扱う製材所さんと直接やりとりして最強の家づくりを目指す

Q:材木にもこだわっているのですよね?

木造住宅には良い材木を扱う製材所の存在は欠かせません。
しかしこの数十年、業界全体が海外からの木を主に扱ってきました。
またその選択は、工務店さんにお任せしていました。
多くの工務店さんも材木屋さん、業界の流れに任せていたのが現状でした。
これからは地場の山をしっかり管理し木を活かす技術を持っている製材所さんと〝直〞で設計事務所が組んで、家づくりができる方法をつくり出したいと思っています。
安全な有機野菜は生産者の顔と名前が見えるようになっていますよね。価値ある食べ物を売っているお店を、エンドユーザーは選んで買うことができます。
家づくりでも、どこの山からどんな人の手により製材されてつくられた家なのかが住む人に見えるようにできたら、
もっと木の価値を伝えられる家づくりが可能になりますし、環境のことも自然のことも自分の暮らしの質も高まるバランスをもった家づくりができるようになると思っています。
いままさに東京の木、多摩産材を熟知した製材所さんと組んで、新たな家づくりをしている真っ最中です。


家づくりは暮らし方の理想を叶える建築家をパートナーに!

Q:これから家をつくる方にアドバイスをお願いします。

まずは断熱・気密・耐震の三大基準を将来を見越した計画とすること。
住み始めてすぐに型落ちすることなく、かつ住む人がその人らしく手を加えながら暮らせることが、長く価値のある家として求められています。
そのようなテーマのある暮らし方を大切だと思ってくださる方々のお手伝いがしたいと思っています。
例えば私の事務所兼自宅は、間口も狭いですが、室内の自由度が高くなっています。
私が手掛ける住宅の多くは間仕切りになるべく耐力壁をとらないようにして、暮らし方を自由に変えられるようにしています。
お施主さんの子供たちが大人になって家族構成が変わったり、家を住み替えで売ることになった場合、間取りをがらっと変えることも可能なように設計しています。
外側でしっかりと断熱をすると、室内の温度差が小さくなり、家の内側の暮らし方は自由度が増します。
耐火、耐震、断熱は相性が良いので、一緒に考えていくと質の高い住まいとなります。

今後、5年10年先になれば、断熱・気密のしっかりした住宅=型落ちしない躯体が当たり前の条件になると思いますが、
正直なところ、実際に質の高いレベルで対応できるかどうかは工務店や設計事務所によって差があるのが現状です。
それらの底上げのためにも、エネルギーとまちづくりの会社をつくり、工務店さんに技術指導をしたり、気密・断熱性能の大切さを住む方にレクチャーしています。
お施主さんには、数値だけでなく、「どんな暮らしがしたいのか」をしっかり受け止めてコスト管理を共有し実現してくれる建築家さんと家づくりをしてほしいと思っています。
何より、信頼し合って表裏なく話ができる方を見つけてください。
契約前に急かされて、あわてて決めるなんてもってのほか。
家づくりは大変だからこそ、良いパートナーと楽しまないと!