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住まいづくりを考えるブログ

2019/09/03住まいの性能と健康・快適性

かなり怖い住宅に広がるカビ汚染

こんにちは。
独立系住宅アドバイザーの「高性能な住まいの相談室」の高橋です。

少し古いのですが、2018年10月号の日経ホームビルダーで、「住宅に広がるカビ汚染」という特集が組まれています。ちょっと時間ができたので、あらためて読み返してみました。

住宅にカビ汚染が広がっています。
我が国では、住宅に結露が起きるのが当たり前なので、住宅のカビも仕方がないと考えられがちですが、この特集記事を読み返してみると、カビはかなり怖いものだなとあらためて思います。住宅の専門家向けの記事なので、そのままご紹介しても、一般の人にはわかりにくい部分がほとんどですが、わかりやすいところ抜粋してご紹介したいと思います。



見えない場所で発生しているカビこそが問題
特集記事の冒頭で、同誌の読者(工務店関係者が主だと思われます。)に対するアンケート調査で、過去3年以内にカビへの対応経験がある方々に対して、問題となったカビの発生個所についての設問の回答結果がまとめられていました。その結果、第1位は床下、2位が基礎の断熱部分、納戸、室内側の壁が同率、3位が壁の中となっていました。

つまり、居住者が目に見えない場所でカビが発生し、それが居住者のカビアレルギーや夏型過敏性肺炎を引き起こしている事例が多いようです。居住者の体調不良で住宅を調査して、はじめて住宅がカビで汚染されていることがわかることも多いようなので怖いですよね。



カビアレルギーはダニアレルギーやスギ花粉症よりも厄介
まず、住宅に発生するカビによってアレルギーや健康障害を発症する患者は、明らかに増加傾向にあるそうです。公的なデータはないそうですが、10年前と比べると、子どもだけでなく成人も明らかに増加傾向にあるそうです。

そして、私も全く知らなかったのですが、カビはアレルギーの専門医にとって、最も難しくて手ごわいアレルゲンなのだそうです。ダニアレルギーによる喘息やスギ花粉を治すのはそれほど大変ではないそうですが、カビアレルギーを治すのはすごく大変なことだそうです。そして、カビのアレルギー患者が増えているのは、アレルギー体質の人の増加と関係しているそうです。アレルギー体質の人は、気道や鼻の粘膜のバリアーが破壊されて、アレルゲンが通過しやすくなり、連鎖反応を起こすのだそうです。

ダニアレルギーやスギ花粉症の人がカビの多い環境に5年、10年単位で生活すると、カビアレルギーを併発するリスクが高まるということだそうです。

 

「ダンプネス」という言葉があります。これは、「湿気のある、じめじめした」という意味で、居住環境に過度の湿気があり、カビや結露などの問題が生じている状態を指す言葉です。近年、このダンプネスとアレルギー疾患をはじめとする健康影響との関係が国際的に注目されているそうです。秋田県立大学の長谷川教授らの研究グループの居住環境におけるダンプネスの程度と子どものアレルギー疾患との関係に関する調査結果では、ダンプネスの程度が高いほど、子どもの有病率が高いそうです。ダンプネスが高ければ、アレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、喘息などの有病率が高いという結果は、容易に予想することができます。

でも、ちょっと驚いたのは、この他に花粉症や食物アレルギーなど、カビとは直接関係なさそうな症状も有病率が高くなっているということです。これは先ほど触れた、いったんアレルギー体質になると粘膜のバリアーが破壊されて、アレルゲンが通過しやすくなり、他のアレルギーになりやすくなるということなのでしょうね。



カビはシックハウス症候群の原因にも
さらに、カビはシックハウス症候群を発症させる原因にもなるそうです。シックハウス症候群というと新しい建材や防虫剤が原因として考えられがちですが、米国では以前からカビが原因物質として説明されてきているそうです。シックハウス症候群は、薬が効かないうえに、カビに対する感受性を高めるので、自分の家に住めなくなる人を増やしてしまうのだそうです。

せっかく一生に一回の住まいづくりと思って家を建てても、住むと健康を害してしまい、住むことができなくなるなんて、とても悲しいし、経済的にも大変なことですよね。
日本でダントツに多いスエヒロタケによる健康被害
また、熱海市の60歳代の女性が壁の中で発生したスエヒロタケにより、アレルギー性気管支肺真菌症を発症したという事例も紹介されていました。壁の中などで結露が発生した結果、壁内や床下でスエヒロタケが増殖したことによるのだそうです。

このスエヒロタケというのは、下の写真のようなキノコで、世界でも最も一般的なキノコの一つだそうです。ただし、抵抗力が落ちたヒトやイヌの肺に寄生してアレルギー性気管支肺アスペルギルス症同様にスエヒロタケ感染症を引き起こすのだそうです。

驚いたのは、「環境真正担子菌スエヒロタケによるアレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎の検討」という医学系の論文(東京慈恵医科大 松脇由典氏ら)をちょっと読んでみたのですが、スエヒロタケが病原真菌として報告されている事例は、日本からの報告が世界のなんと46%を占めているのだそうです。

これだけ、日本からの報告事例が多いのというのは、日本の住宅の壁の中が湿潤環境に保たれやすいという住宅の性能不足に起因している可能性が高そうですね。



カビによる感染症は、日和見感染?
もう一つ、怖いなと思ったのは、カビ原因で発生する感染症は、日和見感染が多いのだそうです。

日和見感染というのは、抵抗力が低下したために通常であれば病原性を示さないカビで感染する病気だそうです。抵抗力が落ちた人が在宅療養している場合に注意を要するのだそうです。

今の日本は、高齢化が進み、抵抗力が落ちた高齢者が家で長時間過ごすことが多くなっています。さらに言えば、病院での長期入院が認められにくくなり、在宅医療にシフトが進みつつあります。そんな中で、カビの菌が飛び交っている家で、体の弱った人が療養していれば、どういう事態が起こるかは想像に難くないですよね。

できることならば、特にシニアの方々は、できる限り、カビが発生しにくい結露の起きない家、特に壁内結露など内部結露の起きないような性能の家に、早めにリノベーションすることをお勧めしたいです。