2026/01/27住宅性能全般
【窓選び・上級編】後悔しないために知っておきたい窓種・ガラス・日射設計の実務ポイント ― 気密・日射取得・パッシブデザインまで、設計で差がつく考え方 ―
前回の記事では、窓の断熱性能が住宅の快適性や光熱費に大きく影響することを解説しました。
今回はその続編として、「では実際に、どのような窓をどう選べばよいのか」という、より実務に踏み込んだ内容をお伝えします。
断熱性能の数値だけを追いかけても、必ずしも快適な住まいになるとは限りません。
窓種、ガラスの構成、方位ごとの日射の扱い方まで含めて考えることで、はじめて「後悔しない窓選び」になります。
窓種選びでもう一つ重要なのは「気密性能」という視点
まず、上級編で最初にお伝えしたいのは、窓種を選ぶ際には断熱性能だけでなく、気密性能を必ず意識してほしいということです。
日本の住宅で最も一般的に使われているのは引き違い窓ですが、高気密・高断熱住宅を目指す場合、この引き違い窓には注意が必要です。
引き違い窓は構造上、サッシ同士が重なり合って閉まるため、どうしても隙間が生じやすく、気密性能を確保しにくいという弱点があります。
そのため、実は諸外国ではあまり使われていません。
実際、同じ開口面積で比較した場合、縦すべり出し窓や縦すべり窓とFIX窓を組み合わせた構成のほうが、気密性能は大きく向上することが分かっています。
もちろん、「引き違い窓は絶対に使ってはいけない」ということではありません。
ただし、何も考えずに多用してしまうと、住宅全体の気密性能を下げてしまう原因になるため、どうしても引違い窓にしたいところだけに限定することをお勧めします。
高気密住宅に向いている窓種の考え方
では、気密性能を重視する場合、どのような窓種が適しているのでしょうか。
縦すべり窓や横すべり窓は、レバー操作によってサッシを枠に強く押し付けて閉める構造になっています。
そのため、引き違い窓に比べて気密を確保しやすく、高気密住宅ではよく採用されます。
それから、ヨーロッパで一般的なドレーキップ窓は、換気用の内倒しと全開放を切り替えられる高性能な窓です。断熱性・気密性ともに優れており、性能を重視する住宅では非常に合理的な選択肢です。
ちなみに、YKKAPは、ドレーキップ窓を独自に「ツーアクション窓」と呼んでいます。
大きな開口を確保しながら気密性能も妥協したくない場合には、ヘーベシーベと呼ばれるスライド窓も選択肢になります。
価格は高めですが、性能と開放感を両立したい場合には検討する価値があります。
ドレーキップ窓は、引き違い窓のように横にスライドして開閉しますが、閉める際にはレバーを回して隙間をなくせます。
実は最も合理的な選択肢は「FIX窓」
上級者向けの窓選びとして、ぜひ知っておいていただきたいのがFIX窓です。
FIX窓とは、開閉しない固定された窓のことです。
構造が非常にシンプルなため、気密性能を確保しやすく、コストも比較的抑えられます。
高気密・高断熱住宅で暮らし始めると、実は日常的に窓を開ける機会はそれほど多くありません。
計画換気がきちんと機能していれば、窓を開けなくても空気環境は保たれるからです。
すべての窓をFIXにする必要はありませんが、「本当にここは開ける必要があるのか?」と一度立ち止まって考えることで、住宅全体の性能を引き上げることができますし、コストダウンも図ることができます。
ペアガラスやトリプルガラスの中空層には、乾燥空気、アルゴンガス、クリプトンガスなどが充填されています。
断熱性能はクリプトンガスが最も高くなりますが、コストも高く、さらにガスは経年で徐々に抜けていくという性質があります。
そのため、性能とコストのバランスを考えると、アルゴンガス入りガラスが最も現実的な選択になるケースが多いといえます。
最近は、ペアガラスの中空層が真空になっている真空ガラスも一般的になってきています。
真空は熱を通さないので、非常に高い断熱性能を持ちます。
ただ、真空層が外からの気圧に負けないために、ドット状にスペーサーが入っています。
ドットは、気にならないといえば気になりませんが、好みは分かれるかと思います。
ぜひ実物を見て検討してみてください。
日射取得と日射遮蔽は「方角」で考える
高断熱サッシでは、同じ窓でも日射取得型と日射遮蔽型のガラスが用意されています。
ここで重要なのは、「どちらが高性能か」ではなく、どの方角に使うかです。
基本的な考え方として、南側には日射取得型を、それ以外の東・西・北側には日射遮蔽型を採用するのが合理的です。
夏の暑さ対策はガラスではなく「庇」で行う
南側で日射取得型を使うと、夏の暑さが心配になるかもしれません。
しかし、本来ここで頼るべきなのはガラス性能ではなく、庇による日射コントロールです。
太陽高度が高い夏は庇で日射を遮り、太陽高度が低い冬は庇の下から日射を取り込む。
この考え方がパッシブデザインです。
このように設計すると、冷暖房光熱費の削減だけでなく、室内の快適性が大きく向上します。
何も考えないで住宅を設計すると、ふつうは図の左側のように夏の日射取得量が多くなり、冬は少なくなります。
ところが、庇の出をきちんと計算して、パッシブデザインを心掛けると、図の右側のように冬の日射取得量の方が多くなります。
このように、夏の日射を遮蔽し、冬は積極的に日射を取得する設計が重要なのです。
西日対策は「外側」で行うのが鉄則
ただ、西日は高度が低いため、庇では防ぎきれません。
そこで、西日対策としては、外付けブラインドやアウターシェードの採用をお勧めします。
特にアウターシェードは、コストも安いですし、後付けも可能なため、既存住宅で西日の暑さに悩んでいる方にも有効な対策です。
日射は、室内側のカーテンやブラインドで防ぐのではなく、外側で遮蔽する方が室内環境は快適になりますし、省エネ上も有効です。
蓄熱と窓性能のバランスに注意する
冬の日射取得を活かすために、床などに蓄熱容量の大きい素材を使う設計もあります。
ただし、蓄熱された熱が放出された後に、窓の断熱性能が低いと、夜間にコールドドラフトが発生しやすくなります。
エネルギー消費量を重視して、南側の窓は、断熱性能を落としても日射取得を優先するべきという考え方があります。
でも、計算上の省エネ性能だけでなく、一日を通して快適に過ごせるかという視点で判断することが重要です。





