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住まいづくりを考えるブログ

2026/02/16住宅性能全般

太陽光発電はもう儲からない? ―「売る時代」から「使う時代」へ。損しない家づくりの新常識―


「最近また太陽光発電が話題だけど、正直もう今さらじゃない?」

そう感じている方は、実は少なくありません。

固定価格買取制度(FIT)が始まった頃は、

「太陽光を載せれば儲かる」
というイメージが強くありましたが、現在は売電価格が下がり、

「太陽光はオワコンでは?」
と感じている方も多いようです。

しかし、ここで一度立ち止まって考えてみてください。

太陽光発電は“儲からなくなった”のではなく、“考え方が変わった”だけなのです。

この記事では、太陽光発電の制度的な現実から、これからの時代に損をしない活用方法までを、順を追って解説します。



太陽光発電は本当にもう儲からないのか?


 

まず結論から言うと、

「太陽光発電はもう儲からない」というのは誤解です。

この誤解の背景には、FIT制度の仕組みが正しく理解されていないことがあります。

 

FIT制度とは何か


 

FITとは、再生可能エネルギーを普及させるために導入された制度で、住宅用太陽光発電(10kW未満)の場合、10年間は固定価格で売電できる仕組みになっています。

ただし、この売電価格は、太陽光パネルの設置コストが下がるのに合わせて、年々引き下げられてきました。

2012年:42円/kWh

2025年上半期:15円/kWh
 


 
売電価格が年々下がっていることで、「太陽光はもう儲からなくなった」と誤解してしまう方も多くなっているようです。

知っておくべきなのは、国は太陽光発電システムの価格相場が下がっていることを踏まえて、売電価格を段階的に引き下げているということです。

FIT制度は、単に「高く買い取る制度」ではなく、太陽光発電という設備投資が、一定の投資効率を保ちながら普及するように設計された制度です。

その際、国が基準としている考え方の一つが、IRR(内部収益率)です。

IRRとは、「その投資が、年率何パーセント程度の利回りを生む投資と言えるか」を示す指標です。

ざっくりとは、「利回り」とほぼ同じと考えても差し支えないと思います。


重要なのはここからです。

太陽光発電システムの価格相場が下がれば、同じIRRを確保するために必要な売電単価は、当然下がります。

制度開始当初は、

·  太陽光パネルが高価
·  工事費も今より割高
·  市場としても未成熟

だったため、初期費用を回収できるよう、売電価格は高く設定されていました。


一方、現在は、

·  パネル価格の大幅な低下
·  施工の標準化・効率化
·  市場の成熟

によって、同じ容量の太陽光でも、導入コスト自体が大きく下がっています。

このため国は、

「システム価格が下がった以上、同じ投資効率を前提とするなら、売電価格を下げるのは合理的」

という考え方で、段階的に売電単価を引き下げてきました。

つまり、現在の売電価格は、

『太陽光発電が不利になった結果』ではなく、

『システム価格の下落を織り込んだ制度調整の結果』だと言えます。

売電単価だけを見ると不利に見えるかもしれませんが、その背景には、国が「設備価格の実態」を毎年検証し、過剰な利益も、過度な不利も生まれない水準に調整しているという制度設計があります。

売電価格は単独で決められているのではなく、「太陽光システムはいくらで導入できるのか」という実勢価格を前提に、毎年見直されています。


 

2025年以降の制度改定で何が変わったのか

 


2025年10月から、FIT制度はさらに大きく変わりました。

・設置から最初の4年間:24円/kWh
・5年目から10年目:8.3円/kWh


一見すると、「後半がかなり安い」と感じますが、この制度改定の目的は、初期費用をできるだけ早く回収できるようにすることです。

投資の世界では、「同じ金額でも、早く回収できる方が価値が高い」と考えます。

これを現在価値の考え方と言います。

将来得られるお金を、
「今の価値に割り戻して評価する」
という発想です。

最初の4年間で高い売電単価が設定されていることは、現在価値を考えると、投資効率の観点では、有利になったと言えます。

 


再エネ賦課金という見落とされがちな前提


 

ここで、もう一つ知っておいてほしいのが、再エネ賦課金です。

電気料金の明細を見ると、
「再生可能エネルギー発電促進賦課金」
という項目があるはずです。

これは、太陽光などの再生可能エネルギーの買取費用を、電気を使うすべての人が、使用量に応じて負担している仕組みです。


つまり、太陽光を載せていない人も、すでに売電の原資を負担しているということになります。

だからといって、「絶対に載せた方が得」と単純には言えませんが、「再エネ賦課金」については、理解しておくべきでしょう。

 


FITで得していた時代は終わった?

 


ここからが、これからの太陽光発電を考えるうえで最も重要なポイントです。

太陽光発電は、売電で儲ける時代から、自家消費で得をする時代に完全に移行しています。

なぜなら、昼に売る電気より、夜に買う電気の方がはるかに高いからです。


例えば、東京電力の平均モデルでは、

・電気料金:約33円/kWh
一方で、
・昼に売る電気:24円、もしくは8.3円
 
つまり、安く売って、高く買っている状態になっています。

これ、かなりもったいないですよね。




太陽光で本当に得をするための考え方




そこで重要になるのが、自家消費率です。


 
太陽光は昼に発電しますが、家庭で電気を最も使うのは、夕方から夜にかけてです。

このズレを、どう埋めるかがポイントです。

・電気は、できるだけ太陽光が発電している昼に使う
・夜に電力会社から買う電気を減らす

これが、太陽光発電の投資効率を高める基本戦略です。




自家消費を増やす最も現実的な方法 ~おひさまエコキュートという選択肢~


 

洗濯や掃除を昼に行うのも効果はありますが、一番インパクトが大きいのは、給湯器の選択です。

おひさまエコキュートは、昼間の太陽光発電を使ってお湯を沸かす仕組みです。

もともとエコキュートは、原発がフル稼働している時代に、深夜に余る電気の活用のために、開発されました。

それが多くの原発が止まり、一方で太陽光の普及で昼間の電気が余るようになり、おひさまエコキュートが開発されました。

 

おひさまエコキュートのメリットは、次の3点です。

・昼に発電した電気を有効活用できる
・貯湯ロスが少ない
・自家消費率を大きく引き上げられる


これ、つまりエコキュートは、実は太陽光との相性が非常に良い設備なのです。




蓄電池はどう考えるべきか?


 

蓄電池については、イニシャルコストと光熱費削減という費用対効果の経済合理性だけで見ると、まだ微妙というのが正直なところです。

ただし、

・国や自治体の補助金
・災害時の安心感
・停電時でも生活を継続できる価値

をどう評価するかで、判断は変わります。

なお、蓄電池がなくても太陽光があれば昼間は使える、と思われがちですが、実際には自立運転モードでは、「パワコンのコンセントしか使えない」という点には注意が必要です。

つまり、太陽光パネルだけあっても、停電時はコンセント一つ分しか使えないのです。

防災対応という観点を鑑みると、停電時も普段とあまり変わらない生活をおくれる蓄電池の導入はとても有効です。

 

設置費用と維持費の現実


 

太陽光発電は、決して「タダで使える設備」ではありません。

・太陽光パネル:約28万円/kW
・一般的な4.5kW:約126万円

パワーコンディショナーは、
10年程度で交換が必要になり、約20万円かかります。

また、2017年以降は定期点検も義務化されています。



新築時の優先順位として正しい考え方


 

結論として、新築時に太陽光を最優先すべきかというと、答えはNOです。

 

住宅の性能には、

・躯体性能(耐震・断熱・気密・耐久)
・設備性能(太陽光・蓄電池など)

があります。

躯体性能は長く持ちますが、設備は必ず更新期を迎えます。

だからこそ、

1.まずは躯体性能をしっかり確保
2.余裕があれば太陽光
3.さらに余裕があれば蓄電池

この順番が、最も合理的です。


具体的には、最低限確保すべき躯体性能として、以下の4点を確保した上で、太陽光パネルの設置については判断するべきです。

・断熱等級6
・気密測定を実施してC値1.0(できれば0.5)以下
・耐震等級3
・永続性のある防蟻処理+アメリカカンザイシロアリ対策

まずは、これらの躯体性能をきちんと確保した上で、太陽光パネルの設置を考えるべきなのです。