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Architects

森健一郎

一級建築士事務所 感共ラボの森

〒211-0002横浜市中区海岸通4-22-302
045-263-6674
https://kanlabono.com/

○1967年2月生まれ
●1990年 神奈川大学工学部建築学科卒業
○ゼネコン設計部で3年勤務、マンションなどの設計監理を経験
●アトリエ系事務所で3年勤務、公共建築の設計監理を経験
○健康で心地よく、省エネで美しい、バウビオロギー建築を提案
●家族は妻と3人の息子がいます。趣味は硬式テニス、好きな音楽はビートルズ
○資格 BIJバウビオローゲ、一級建築士、省エネ建築診断士、CASBEE戸建て評価員

受賞歴、書籍
○2022年 キイノクスハウスコンペ 入選 商品化住宅プロジェクト始動
●2010年 神奈川建築コンクール住宅部門優秀賞受賞
○2015年 木造住宅のコストが分かる本 執筆
●2012年 長期優良×省エネ法×瑕疵担保 執筆

○住宅雑誌への事例紹介 多数

Works

の作品

Interview

インタビュー

Q:バウビオロギーという考え方を重視しているということですが、これについて教えてください。

私は家づくりに関して、バウビオロギーの考え方を基本にしています。
バウビオロギーとは、直訳すると建築生物学といいます。要は、住人だけでなく、地球自体をエコロジーで快適な環境にしましょう、という考えです。
そのためには、断熱・気密などの温熱環境に関してだけではなく、
・自然素材の利用・窓換気による汚染物質の除去・地産地消・住居心理学や五感に配慮した空間造形などを推奨しています。
地球温暖化防止やSDGsなど、世界規模でいろいろ取り組まれていますが、バウビオロギーというのは、40年以上前にドイツで発祥した学問です。
SDGsよりも前に出てきた学問なので、当然、SDGsにもこの考え方も入っていると思います。
資源を有効に使うとか、伐採したところに次の苗を植えるなどの活動も入っています。
また、住む人の健康に配慮するのもバウビオロギーの要素のひとつです。

例えば電磁波の影響ですが、ヨーロッパでは電磁波の許容値というのが決まっています。
日本は許容値の設定が全くないのですが、私は電磁波の影響を受けにくい家を設計するようにしています。
特に人が長居する場所であるベッドやソファには電磁波の影響を受けにくい設計が必要になります。快適で持続可能な建築だけではなく、デザインも同じです。
奇抜なデザインよりも、地域に根差したデザインをなるべく取り入れようというイデオロギーを大切にしています。


月齢伐採をした木を自然乾燥させると、木に粘りが増す

Q:月齢伐採について教えてください。

構造材は、伐採時期から流通経路まで考えられた浜松市天竜区の天竜

T・S・ドライシステム協同組合の天然乾燥材を使っています。
学術的にまだ議論されてはいますが、森の旬である冬の、特に月が欠けていくときに伐採する月齢伐採という切り方です。
「月齢伐採」した木は、水分・養分が少なく、腐りにくい、カビにくい、狂いにくい特徴があります。
伐採した場所での「葉がらし」により、木材にとって大切な天然のフェノール成分がつくられるため、カビや腐朽菌を寄せ付けない、香り豊かで良質な材となります。

今、小田原に2軒建てていますが、2軒とも天竜杉を使っています。
木の香りもまた、人工乾燥の構造材とは全然違いますね。この小田原の家では、日本で昔から使われている瓦を使っています。
建築費が余分にかかり、耐震性能上も少し不利にはなりますが、耐久性やメンテナンス性も含めて、瓦は一生ものです。
屋根の塗装等の維持コストを考えると、中長期的には瓦のほうが経済的です。
そういった建材も地産地消の観点から、地域のものをなるべく使うようにしています。


家に愛着をもって、適切な時期にメンテナンスを

Q:家を長持ちさせるための暮らし方のコツはありますか?

10年、20年、その時期に適切な箇所をメンテナンスすることが大事です。
例えば、給排水管であれば、予め交換しやすいような工法にしておくとか、仕上げについてもなるべく経年変化がない、あるいは美しく経年変化するものを使うようにすることも大切です。
そういうことで家は長持ちします。あとは住んでいる方の家への愛着でしょうね。
自分の家にどれだけ愛着をもっているかだと思います。やはり自分が愛着をもっていれば、好きな物には手をかけたくなるものです。
そのために、作り手としては、住んでいる人たちに好きになってもらえる住宅をつくっていきたい、と思っています。

私は、お客様とは長いお付き合いになることが多いですね。
なぜかというと、メンテナンスも含め、室内の温湿度のデータを分析したら、その結果をお客様に必ずご報告するようにしているからだと思います。


温湿度データ分析と快適に暮らすアドバイス

Q:温湿度データからどのようなことが読み解けるのですか?

データを読み解くと、想定していた日射取得ができていないことも、わかります。
そのようなときは、お客様に「日中カーテン閉めてますか?雨戸閉めてますか?」と質問をして、「雨戸を開けておくと室内はもっと暖かいですよ。
夜はカーテンを1枚閉めると表面温度が2°C、体感温度でいうと1°C暖かくなります」と、データを分析してご報告をするときに、そういう暮らし方のアドバイスもしています。
建築家としては、そこまでアフターフォローする方はあまりいないと思います。
居住者がその家を理解し、その家に愛着をもって暮らしていくための取り組みで、お客様にとってもデータで示されるとすごく納得してくださいます。

とくにエアコンは、分かりやすいです。
データを見るとエアコンをかけるとすぐ室温が上がりますので、何時にエアコンをかけて、何時に切ったのかまで、データでわかります。
エアコンの入切が激しいときは連続運転をするほうが省エネであるとアドバイスしています。
断熱・気密をしっかり行った家は、省エネ的にも光熱費がとても安くなります。
冷暖房光熱費は普通の家の40%ぐらいには下がります。
年間の光熱費のデータをいただいて、光熱費のシミュレーションと比較していますが、大体、皆さん、シミュレーションよりは低く暮らしているようです。


今後の展望

Q:今後の課題及び展望を教えてください。

私のような断熱や気密にこだわった家づくりをしていると、なるべく冷暖房をかけないように暮らそうとするお客様がいますが、それはやめてくださいという話はしています。
もともと省エネ化するように設計していますから、寒いとき、暑いときはエアコンをつけてもそれほど光熱費は変わらないので、快適な温度で暮らしてください、とお伝えしています。
デザインと温熱環境を考えると、どうしても歯止めをかけてしまうことになります。

例えば、開放的に窓を大きく開けたいと思っても、温熱シミュレーションをすると、数値的に難しいということがあります。
窓の性能を上げればいいとは思いつつ、そうするとコストがアップしてしまい、予算的にできないということが起こります。
そういうところで歯止めをかけながらも、それでもやっぱりいい住宅をつくらなければいけない。
そこはジレンマではありますが、少しでも理想に近い家づくりをこれからも目指していきたいと思っています。
今後の展望としては、温熱や環境とデザインの高次元の融合です。健康で快適な環境と建築家としてのデザインとの兼ね合いが一番の悩みどころでもあります。
どのようにうまく融合させて、美しい住宅、建築物をつくるのか......。
自分としてはまだまだ道の途中だと思っているので、これからもより快適でなおかつ美しい家をつくり続けたいと思っています。