2021/06/30
スタッフブログ
YKK AP株式会社 リノベーション本部 事業企画部長 米山 浩志さん
以上のお二人をお迎えして、当社の高橋が窓の選び方について伺いました。
対談形式で全3回にわたって、ご紹介していきますが、今回はその第一弾です。
まず、お二人のプロフィールをご紹介します。
石川さんは樹脂窓部門の責任者をされています。
米山さんは窓のリフォームとリノベーションを担当されており、まだ充分に認知されていない窓のリフォームについて、ユーザーの方への需要・普及拡大を目指して活動されています。
高橋
➢日本の住宅の性能は先進国の中でも非常に低く、中でも窓の性能は非常に重要なのですが、最初に諸外国と日本の窓の違いについて、教えてください。
石川さん
➢まず、日本には、家そのものに対して、適合させなければならない断熱に関する基準がありません。下の図は、それぞれの国の窓の断熱性能に関する基準です。
断熱性能基準は値が小さければ小さいほど、性能が良いことを意味します。
諸外国では、非常に厳しい断熱性能基準が定められており、しかも義務化されています。
一方で日本では、基準自体も非常に緩く、義務ではなくあくまで推奨数字でしかないため、基準に達していなくても家を建てることが出来てしまいます。また、そういった歴史背景が非常に長いため、窓の性能含め、良い性能のものが普及していくスピードが非常に遅いというのが残念ながら日本の現状です。
高橋
➢つまり、日本は基準も緩く、義務化もされていない。他の国だと使うことが許されない低性能のサッシが使われているということですね。
石川
➢そうです、他の国は法律で決められています。国によって、家全体の性能を定めているのか、窓の性能を定めているのか等の違いはあります。
棒グラフの高さは性能の高さを意味していまして、例えば、日本のグラフに【1,2,3地域】とありますが、それは北海道や東北などの寒い地域を意味し、
U値2.33[W/㎡・K]という断熱性能基準になっていますが、それはドイツ全土の断熱性能基準である1.3という数字よりも2倍近く緩い基準です。
また、中国の南側にある比較的暖かい【夏暑冬冷地区】でも2.5~2.8という基準が定められていますが、
その基準は日本における【1,2,3地域】である北海道や北東北のような非常に寒い地域とほぼ同じ数字であることからも、
日本の基準は非常に緩いということがお分かりいただけるかと思います。
高橋
➢日本の【6地域】である東京、横浜、名古屋、大阪、福岡という温暖な主要地域だと4.65という数字になるわけですね。
石川さん
➢はい。窓の性能基準の有無の結果として、各国で樹脂窓の普及率に差が出ています。
日本では、性能が最も良いとされる樹脂窓の普及率は22%(2020年度)です。
一方で、ヨーロッパや韓国・アメリカなどの諸外国では6~7割が樹脂窓になっています。
ヨーロッパでは、樹脂窓以外はほとんどが木製サッシです。
海外ですと、高性能な窓を使用することは当たり前ですが、日本は普及が遅れています。
今、日本では、アルミと樹脂複合窓という、アルミの内側に内側が樹脂で出来ている商品が最も流通しています。
米山さん
➢諸外国と比較するとまだまだですが、10年前の樹脂窓普及率は7~8%でしたので、この10年でも樹脂窓化は進んだという肌感覚はあります。
高橋
➢YKKAPさんだけで見ると、樹脂窓の比率は上がっていますか?
石川さん
➢当社の10年間の樹脂窓の販売推移は次の図になります。
構成比でいくと19年で26%、20年だと30%弱と、年々増えてきています。
義務化されていないため、急激な増加はありませんが、高橋さんのように断熱の大切さを伝えていただいている方が増えてきたおかげで、
「樹脂窓が良いよね。」というお声は増えてきています。
高橋
➢今後のシェア目標はありますか。
石川さん
➢当面の目標として、市場全体の30%を樹脂窓にしていこうと考えています。
そのためには、逆算するとYKKAPとしては、樹脂窓の構成比を4割にする必要があると思っています。
米山さん
➢実はリフォーム増改築での樹脂窓の伸びがあまり良くありません。
リフォームは設備の更新という意識が強いため、シングルガラスがペアガラスになることはありますが、
今アルミのものがついているとすると、同じアルミのものに取り換えるパターンが多いです。
高橋
➢それは技術的に樹脂に取り換えることができないのですか?それとも、なんとなくアルミのままになっているのですか?
米山
➢なんとなく同じものに取り換えているパターンが多いです。
我々の努力不足を痛感しています。
“せっかく更新するのであれば、より良いものを使っていこう”という活動が足りないと感じています。
せめて、同じものではなくて、アルミ複合や樹脂という少しでも高性能なものに変えていただくだけで、住む方の暮らし方が随分変わってきます。
感覚的にはリフォームの領域で見ると、素材別に見ると半分はアルミのままの更新になっていると思います。
高橋
➢米山さんの役割は重要ですね!
石川さん
➢プロの方からも“高性能な窓は良いもの”というアドバイスがもっとあるとありがたいです。
樹脂窓の良さは、びっくりするくらい体感できますので。
高橋
➢YKKAPさんの樹脂窓の商品ラインアップを教えてください。
石川さん
➢当社の樹脂窓は、APWの330と430という2つのシリーズのラインナップになります。
地図の囲みは、新築住宅での使用を想定した商品ごとの推奨エリアで、
青の囲みエリアでは高性能トリプルガラス樹脂窓、ピンクの囲みエリアではスタンダード樹脂窓を推奨しています。
最近ではエリアを超えて、西日本や九州でも高性能トリプルガラス樹脂窓をご採用いただくことも増えてきました。
暖かい地域では、びっくりするくらい冷房の効きがよくなるので、暑さにも性能を発揮します。
それを考えると、このデータは古いかもしれないですね。
高橋
➢つまり、6地域で430を使っても良いということですね!
例えば、約30坪の戸建て住宅でAPW330からAPW340に仕様を上げるとすると、大体いくらくらいのコストアップになりますか?
石川さん
➢工務店さんや窓種にもよりますが、大体プラス100万円、もしくはもう少し少ない金額くらいではないでしょうか。
高橋
➢性能を上げると快適性や健康面のメリットだけではなく、また光熱費も下がりますよね。
石川さん
➢そうです。こちらをご覧ください。
こちらは東京と盛岡のデータになります。
冬24℃、夏25℃のエアコン温度設定を前提とした場合に、
東京のアルミサッシが元々付いていた場合と比較するとAPW330に付け替えると16,400円/年、
APW440に付け替えると19,900円/年お得になるというデータがあります。
もし、エアコンの冷暖房効果をさらに上げると、よりお得になるかと思います。
例えば、盛岡のように東京より冬は寒い・夏は暑いエリアだと、より冷暖房効果が必要になるので、お得になるという計算です。
高橋
➢この計算の想定は、部分間欠冷暖房か全館冷暖房のどちらですか?
石川さん
➢部分間欠冷暖房で計算しています。
あくまで充填断熱で、窓だけ性能を変更した場合を想定した計算になります。
高橋
➢全館冷暖房にすると、よりメリットが出るということですね。
石川さん
➢そうですね、建物自体の性能が上がるとより効果は上がります。
性能の悪い家を全館冷暖房にすると、光熱費がとんでもないことになるので、あり得ないと考えています。
高橋
➢そうですね。そこの比較が難しいですね。
石川さん
➢この計算は従来の在宅時間を想定していていますが、今はテレワークも増えているのでこの数字以上のメリットがあるのではないでしょうか。
この続きは第二弾でお送りします!