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2024/03/12

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日本の高気密・高断熱住宅事情~「家が寒い」理由と失敗しない工務店選びのポイント~
「今度建て替える家は寒くない家がいい」、もしくは「結露の起こらない家にしたい」と考えている人も多いのではないでしょうか。
それを実現できる家を高気密・高断熱住宅と呼びます。高気密・高断熱住宅とは、健康・快適・省エネな住まいを実現するために、断熱性能を高めるとともに隙間をできるだけ減らしてすきま風を極力減らした住宅です。わずかな冷暖房エネルギーで、暖かさ(夏は涼しさ)を確保でき、とても快適な暮らしを実現できるという点に特徴です。


健康・快適・省エネな住まいを実現するために、まず必ず認識しておきたいことがあります。それは、意外に知られていないのですが、日本の住宅性能は他の先進国よりも圧倒的に劣っているという事実です。工務店やハウスメーカーの多くは、欧米はおろか、今や中国や韓国の基準も満たさない家を建てているのです。このことを知らずに家を建ててしまうと、後悔することになります。

本記事では、日本と世界の高気密・高断熱住宅事情の比較から失敗しない工務店選びのポイントまで分かりやすく解説します。



1. 日本は省エネ性能で他国に後れを取っている

先進国は、どの国も住宅の省エネ性能や断熱性能を決める省エネ基準を定めています。制度面において、日本が後れを取っている理由として、3つの問題点が挙げられます。 

1-1 25年前に定められた基準とあまり変わっていない

1つ目は、現在の日本の「省エネルギー基準」は、平成28年基準と呼ばれるものですが、実はその前に定められていた平成11年基準(次世代省エネ基準)からは、計算ロジックが変更されているだけで、要求されている性能レベルはほとんど変わっていないという事実です。つまり25年も前の基準と要求水準がほとんど変わっていないのです。

欧米各国の省エネ基準は3~5年ごとに改定されていて、そのたびに基準がどんどん厳しくなっています。下図は、時系列で表したドイツの省エネ基準の変化に、日本の基準を照らし合わせたものです。

 


出典:一般社団法人日本エネルギーパス協会

現在の日本の省エネ基準のレベルは、ドイツが1984年から1995年に定めた基準の間くらいということが分かります。


1-2 省エネ基準の義務化が始まるのは2025年

そして2つ目の問題点は、現時点では省エネ基準への適合が義務化されていないという点です。他の先進国では省エネ基準は義務化されていて、適合していないと新築の許可が下りません。 それに対して日本では、現時点では、先進国の中で唯一、省エネ基準への適合が義務化されていないのです。

日本でも、2022年に建築物省エネ法が改正され、2025年4月から、やっと全ての新築住宅に対する「省エネ基準適合の義務化」が始まります。

省エネ基準の適合義務化については、もう一点留意が必要です。現在の省エネ基準の断熱性能は、断熱等級4と呼ばれるもので、2022年4月までは最高等級でした。ところが同年5月に断熱等級5、さらに同年10月には断熱等級6および7が定められました。つまり、それまで最高等級だった断熱等級4は義務化に伴い最低等級になるとともに、その上に上位等級が3つも定められたのです。

さらに、省エネ基準の適合義務基準が遅くても、2030年までに断熱等級5に引き上げられることがほぼ確定しています。

つまり、これから家を買うのであれば、最低でも断熱等級5の性能を確保しておかないと、あっという間に最低基準を満たさない家になってしまうということです。これでは、ほぼ確実に資産価値を大きく下げることになります。資産価値を落とさない家にするためには、できれば、断熱等級6以上の性能を確保することをお勧めします。




2.日本の住宅は特に窓の断熱性能の確保が後れている

断熱性能とは簡単に言うと、室内外の温度の出入りをシャットアウトする性能のことです。そして家の断熱性能では、窓の性能がとても重要です。YKKAPの試算によると、複層ガラスのサッシの場合、夏に家に入ってくる熱の74%は窓からの侵入です。反対に、冬は52%の熱が窓から出ていきます。日本の既存住宅の多くは単板ガラスであることを考えると、熱が窓から出入りする割合はより高くなることが容易に予想できるでしょう。



日本の既存住宅の窓の多くは、アルミサッシです。アルミはとても熱を通しやすく、樹脂や木の1,000~1,400倍にも及びます。他の先進国では、アルミサッシはほとんど使われておらず、樹脂もしくは木製サッシが主流を占めています。それに対して、日本における樹脂の普及率はおよそ20%(2018年)にとどまっています。

【世界各国における樹脂窓の普及率】



日本サッシ協会が設定しているラベリング制度は、窓の断熱性能を4段階で評価しています。問題なのは、ラベリング制度の評価基準は、世界の窓の断熱基準よりもはるかに緩いという点です。基準は熱還流率(U値)によって決められていますが、日本サッシ協会が設定している窓の断熱性能に対する基準は、4.65〔W/㎡・K〕です。

4.65〔W/㎡・K〕以上のサッシ性能の窓は星1つで、2.33〔W/㎡・K〕以下のものに対しては、最高ランクの星4つと評価されています。



ところが、海外の基準に目を向けてみると、日本では最高ランクとのお墨付きを受けたサッシ(2.33〔W/㎡・K〕以下)は、最低基準以下となってしまうのです。各国の窓の断熱基準は、以下のとおりです。



ドイツの基準値は、1.3〔W/㎡・K〕以下。中国においては地域差がありますが、2〔W/㎡・K〕前後で、米国では南部地区を除き2〔W/㎡・K〕未満です。

日本で最高等級の評価を得られる2.33〔W/㎡・K〕レベルのサッシは、諸外国では最低基準を満たしておらず、違法になってしまうのです。つまり、日本で普通に家を建てるということは、諸外国では考えられないほど低性能の家になってしまうということです。この事実を認識して住まいづくりを始めるか否かは、そのあとの満足度に大きな影響を及ぼすことはお分かりいただけると思います。

日本を含む窓の断熱性能基準の緩さは、サッシのフレームの素材が影響しています。日本はアルミのペアガラスの性能(4.65〔W/㎡・K〕)をベースにしていますし、ドイツが1.3〔W/㎡・K〕としているのは、樹脂のトリプルガラスが用いられているためです。下図のようにサッシの断面を見ると、サッシの性能はフレーム素材が影響していることがお分かりでしょう。



このような現状を受けて、2022年に窓の断熱性表示マークも、4段階から6段階に増えています。しかしながら、現時点(2024年3月5日)では一般社団法人日本サッシ協会のホームページには、この新しい基準の情報は掲載されていませんし、新築住宅にこの新基準のラベルのシールが貼られているのを見かけることもありません。

このように、世界基準に近づく動きがようやく出てきたようですが、普及するにはまだまだ時間がかかりそうです。



出典:窓の性能表示制度に関するとりまとめ(概要)|経済産業省


3. 気密への取り組みの遅れも、高気密・高断熱住宅の性能に影響を与えている

そして3つ目の問題点は、気密性能確保への取り組みが遅れているということです。もしかすると、この問題が最も深刻かもしれません。

気密性能とは簡単に言うと、室内外の空気の出入り、つまりすきま風を極力減らす性能のことです。断熱と気密の違いについて、冬の服装に例えて説明してみましょう。寒い日はセーターを着ますが、断熱はちょうど温かさを確保するセーターにあたります。けれども、たとえ分厚いセーターを1枚着込んで外出したとしても、編み目の隙間から風が入ってきて寒さを感じます。それでは、セーターの上に風を防ぐウインドブレーカーが必要ですよね。このウインドブレーカーの役割を果たしているのが、気密性能です。住宅もこれと同じで、断熱材を分厚くしても隙間があれば風は入ってきます。隙間のない快適な家をつくるには、断熱性能とともに気密性能も重要なのです。



気密性能は、住宅の省エネ性能、健康・快適な暮らし、そして家の耐久性能確保においてとても重要です。気密性能について詳しくは別の記事で説明したいと思います。

実は日本には、気密性能に関する基準が存在しません。そのため、あいまいに「高気密の家にしてください。」と発注しても、できた家が隙間だらけで寒くて仕方がないということが起こっており、そのような悩みのご相談も当社は多数いただいています。ですが、そもそも基準がないのですから、「これが高気密住宅です」と言われれば、反論できず、クレームの対象にはなりません。

気密性能はC値(相当隙間面積)で表されます。ところがC値は、図面上では計算して求めることはできません。現場の気密施工レベルに依存するため、一棟ごとに気密測定を行い、C値を算出する必要があります残念なことに、気密測定を全棟行っている工務店・ハウスメーカーは極めて少ないというのが現状です。特に鉄骨造の住宅は、気密性能の確保が苦手で、鉄骨造の大手ハウスメーカーで気密性能を売りにしている会社はほとんど存在しません。

気密測定は、写真のような機械を用いて測定します。筒の中には強力なファンがあり、室内の空気を外に排出し、室内外で気圧差を作ることで、家の隙間から入ってくるすきま風の量を測定して、C値を測定します。断熱性能の確保に比べ、気密性能の確保はとても手間がかかるため、きちんと取り組んでいる工務店・ハウスメーカーはごくごく一部の会社に限られます。

住宅会社選びの際に、「気密測定は全棟実施していますか?」とぜひ質問してみて下さい。この回答によって、その住宅会社の性能に対する取り組みレベルはある程度判断できると思います。



ちなみ諸外国では、下図のようにかなり厳しい気密性能の基準が定められています。

日本の住宅業界の取り組みの現状を考えると、海外レベルに匹敵する高気密・高断熱住宅が一般化するのにはまだまだ時間がかかりそうです。




4. 高気密・高断熱性におけるドイツと日本の違い

当社の代表の高橋は、2016年に、主に省エネ住宅を視察するためにヨーロッパを訪れました。日本の住宅事情とのギャップに驚きの連続でしたが、中でも特に印象に残っているのが、当時はシリアからの難民が欧州に流入している時期で、ドイツで建設中だった難民向け住宅の見学だったそうです。

自国民でもない海外からの難民向けの仮設住宅にもかかわらず、日本ではごく一部の住宅会社しか採用していないような高断熱の写真のような木製サッシが使われているなど、非常に高いレベルの気密・断熱性能が確保されていました。



欧州の国々の基本的な考え方は、たとえ難民でも高性能の住宅に住む権利があり、国はそれを供給する義務があるのだそうです。

一方で、東日本大震災の際に建てられた仮設住宅は、断熱性能の低いものでした。そのため結露だらけとなり、喘息やアレルギーを発症する人が相次ぎ、社会問題にまで発展したほどです。日本とドイツでは住宅の基準が異なるため、このような差が出るのは仕方がないのかもしれませんが、あまりにも差が大きすぎると言わざるを得ません。家の基本性能は、見直される時期に来たのではないでしょうか。




5. 本当の高気密・高断熱住宅は結露が起こりにくい

ある調査では、現在の住まいに対する不満項目(「冬寒い」、「夏暑い」、「冷暖房光熱費が高い」等)の中で、結露の酷さに悩まされている方がもっとも高断熱住宅に転居したい意欲が高いという結果でした。

一方で、「高断熱住宅での暮らしでは、結露がほとんど起こらないことを知っていますか?」という設問では、約3割の方が、「信じられない!」と回答しています。

意外に多くの方が結露の発生する仕組みを理解していないようです。

結露が生じる主な原因は、「室内と屋外の温度差」と「湿度が高さ」です。

空気には水蒸気(水蒸気は目には見えないものであることを理解している人も意外に少ないようです)が含まれています。空気中に含むことのできる水蒸気の量(飽和水蒸気量)は、空気の温度が高いほど多く、温度が低いほど少なくなります。

暖かく湿った空気が冷たい窓などに触れて温度が下がると、飽和水蒸気量が少なくなるため、水蒸気ではいられなくなり、水滴となります。これが、結露が発生するメカニズムです。身近な例としては、夏に冷たい飲み物を入れたグラスに水滴が付く現象がそれにあたります。

特に冬は窓を締め切り、暖房・加湿することで室内の湿度や温度が上がりやすい季節です。室内が暖かくなることで、寒い外気の温度差が大きくなるため、外気に近く温度の低い窓付近では結露が多く発生します。

結露が起こりやすい場所は、外気の影響を受けて冷えやすい窓やサッシまわり、北側にある部屋などです。また、人がいる部屋といない部屋で温度差が大きいと、部屋の間にある壁で結露が発生することも考えられます。そのため、押し入れや家具の裏といった通気性が悪く湿気が溜まりやすい場所も、結露が起こりやすくなります。

また、このような目に見える箇所で起こる「表面結露」とは別に、壁中で起きている「壁内結露」というもっと厄介なものもあります。

結露が生じるとどうしてもそこにカビが生じます。カビはダニの餌になるため、ダニも繁殖し、カビ・ダニがアレルゲンになって、喘息やアレルギーを引き起こします。



また、壁の中で結露が起こると、壁の中が湿潤環境になり、湿った環境を好むシロアリや腐朽菌という木を腐らせるキノコの仲間が繁殖します。これは住宅の耐震性能の劣化に大きな影響を及ぼします。

日本の住宅の平均耐用年数が、欧米に比べて極端に短い要因の一つになっているのです。



これらの結露は、断熱・気密性能をきちんと確保すると、普通の暮らし方をしていれば起こらなくなります。最近、二重になっているグラスを時折見かけますが、このグラスに冷たい飲み物を入れても、グラス表面に結露は生じないですよね。これと同じ理屈で、外の冷たい外気温度が室内に伝わりにくいので、結露が起こりにくくなるのです。

結露が起こらない家にすることは、居住者の結露を拭く手間や健康面のメリットだけでなく、家の耐久性にも大きな影響を及ぼすので、ぜひ意識するようにしてください。

 
6. 工務店やハウスメーカーを選ぶポイント

「それほど基準が低いのなら、日本で高気密・高断熱住宅は建てられないのか」と、嘆く人もいるかもしれません。けれども、全ての国内施工業者がそのような家を建てているというわけではありません。わずかながらですが、意識の高い工務店・ハウスメーカーは存在します。

ただ、住宅会社全体のおそらく、2~3%くらいではないかと思われるので、一般の方が見つけ出すのはなかなか難しいのが現状です。

それでは、具体的にどのように依頼先を選んだら良いのでしょうか。ポイントは以下の3つ。

・ネームバリューで選ばない
・性能にこだわっている工務店やハウスメーカーを選ぶ
・気密測定を全棟行っている会社を選ぶ

一流といわれている高コストの大手ハウスメーカーでも断熱性能が不十分ですし、その多くの会社は気密性能を確保していません。名前だけで選ぶと後悔することになる可能性が高いのです。工務店やハウスメーカーを選ぶ際には、性能へのこだわり、特に気密性能へのこだわりを確認しながら選ぶようにしましょう。


まとめ

日本と世界の高気密・高断熱住宅の現状を中心に、失敗しない家づくりのために知っておきたいことをご紹介しました。法改正が行われたことにより改善の兆しは見えるものの、日本の高気密・高断熱住宅は、世界と比べて低レベルにあります。これから高気密・高断熱住宅を新築または購入するのであれば、「省エネ基準」「断熱性能」「気密性能」の視点から検討するのが無難でしょう。

満足のいく高気密・高断熱住宅を建てるのに、良い施工先を選ぶことは必須条件です。弊社では、結露のない健康・快適な住まいづくりをサポートするために、「住まいづくりのサポートサービス」を通じて、厳選した業者の紹介を行っています。当サービスに登録しているのは、弊社が独自に設定している性能基準を満たした工務店またはハウスメーカーのみ。安心してご利用いただけます。

ちなみに当社が提携する厳しい基準を満たしているのは、大手ハウスメーカー上位10社の中では、2社だけです。十分な性能の会社に出会うのが、いかに難しいのかお分かりいただけるかと思います。

家づくりは「業者を選び間違えたからやり直ししよう」というほど 簡単なものではありません。もしも業者選びを間違えてしまったら、手付金として支払った数百万円が無駄になってしまうでしょう。業者選びにお悩みの場合は、一度弊社にご相談ください。ご相談も工務店・ハウスメーカーのご紹介も完全無料です。
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